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『恋人たち』

橋口亮輔監督の最新作『恋人たち』を鑑賞。
日本映画好きなら誰もが待ち望んでいたことと思います。
公式サイト
『恋人たち』_b0179456_2322624.jpg


わたしにとっても橋口亮輔監督は好きな監督の1人。
過去作『ハッシュ!』『ぐるりのこと。』はオールタイムベストの中に入っている作品です。
というわけで長編は7年ぶりということもあり期待と不安が入り交じる中、行ってきました。

さて、観終わって…
化粧が全部取れてましたね〜( ;∀;)
ボロッボロに泣いて。でも誤解を招かないよう書いておきますと
決して泣きがメインの映画ではありません。
一言で言うと、面白い。いろんな意味で面白い脚本なのです。
橋口亮輔監督のオリジナル脚本ですが、
よくこんなホン書けたなぁと。
言いにくいことをさらっと書きますよね…凄いなあ。
特に主婦の人のキャラ作りは特筆すべきものがある…
主婦ではない監督がなぜあんな風に書けたのか?
女の下品な部分とか、ドライな所とか、
でもね、見た目はおばさんでも腐っても乙女、心はJKのままなところとか!
監督、どうして知ってるんですか?!!ちょっと見てられないぐらいリアルでした。
あるある!いやいや、ああはなりたくない!そんなはずはない!という感じw
笑えるけど痛かったなぁ〜〜
あと、あの皇族のフリしてご祝儀騙し取った事件、実際にありましたよね?
いや、わたしすっかり忘れてました。監督、よく覚えてたなあと。
そもそも映画に雅子さまというお名前が出てくること自体がチャレンジングですね。
それから穏やかでいい人的な職場の先輩の、驚きの過去が最後に明かされる。
片腕の理由ってそれなんだ?
ただ優しいだけじゃない、みんな色々あって今がある。。。
1番胸に刺さったのは、妻を殺されたアツシと妻の姉の、まわりの人たちが去って行った話。
お姉さんなんて事件後に婚約者に別れようと言われさらに友達もいなくなったと。
それってひどい話だけど正直すごくわかるんですよ。
会えば泣いたり怒ったり愚痴ったりするだろうし、
慰めるの難しいしどう接すればいいかわからない、だからまわりの人たちは離れていった。
綺麗事で「自分に出来ることをしたい、何かできることないかな?」
とか言うのは簡単だけど実際には何も出来ないし救えない。
立ち直るまでただ側にいて待つこと、悲しみに寄り添い共に耐えること。
それはとても苦しい事だからみんな逃げたんだと思う…。
それをよくわかっているから、わたしは絶望の淵にいて死にたいと思っていた時期には
誰にも会えなかった、会わなかった。
大事な人が辛い思いをしている時は自分まで生きるのが嫌になった。
…そんな事を思い出して。あのシーンはすごく胸が痛くて悔しくて泣いた。
そしてアツシの独白。
わたしはたまらず号泣しながら頷きながら
「あなたはまったく悪くないよ、それでいいんだよ、毎日頑張ってるよ!」
って心で叫んでました。
丸くなってる背中を撫でてあげたくて。
よしよし、とにかく生きてみてよ生きてみるものだよって。
世の中は不公平です。なぜあなたがこんな思いをしなければならなかったのか。
でもあなたは何も悪くない。どうか生きてくださいって。
そして140分の長尺を感じさせずあっという間にラストシーンへ。
東京から見える青空はビルや高速道路や電線で区切られた小さい空。
だけど少しだけ垣間見えた青空に「右よし、左よし…」のセリフ。
明日からも、なんでもない自分とささやかな希望しかないけど。


by creamn | 2015-11-16 22:55 | 劇場鑑賞

映画鑑賞と読書の記録


by くりーむ
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